計画

3.にぎわいと活力あふれる産業のまちづくり

農林水産業の振興

①農業の振興
【現況と課題】

農業の振興

 本町の農業は、1,350haの耕地を基盤として1,017戸の農家によって営まれており、農家1戸当たりの平均耕地面積は1.33haとなっています。
 また、農業粗生産額は29億9千万円で、農業生産所得は10億4千万円、農家1戸当たりの平均生産所得は1,023千円となっており、果樹56%、米18%、野菜12%が主な収入源となっています。
 そして、専業農家206戸、第1種兼業農家216戸、第2種兼業農家595戸と兼業農家が大半を占めるなど、農家の農業への依存度も低下してきています。
 このような状況の中で、町民の生活に深くかかわり、本町の基幹産業である農業の発展を目指すためには、地域の立地に適した生産システムを確立し、魅力とやりがいのある農業を推進するとともに、農村環境の整備を図っていく必要があります。
 このため、生産基盤の整備や消費者ニーズに即した産物の振興、農業に携わる幅広い人材の育成・確保を推進することが必要です。

農産物の生産振興

 本町の基幹産業である農業は、稲作を中心に果樹・園芸農業が展開されています。また、生産調整の取り組みとして、大豆を中心とした集団転作を行っています。しかし、農業就業者数は少子・高齢化や就業者の農業離れにより、平成12(2000)年の2,192人から平成17(2005)年の1,891人と減少しています。さらに、農産物輸入の増加や景気の低迷により、農産物価格が不安定となっており、就農者の高齢化や中山間部を中心とする農地の荒廃が進んでいます。
 このことを踏まえ、集落を基礎とした営農組織の育成(法人化)を推進し、地域の担い手として育てる必要があります。
 本町の二十世紀梨生産は、100余年に及ぶ歴史を誇り、生産者の栽培努力により名実とも日本一と呼ばれる名産品となっています。しかし、栽培は老木園と急傾斜の樹園地が多く、梨生産の省力化を進める必要があります。
 県下一の産地として成長しているブドウ(ピオーネ)生産は、老木の改植、施設の老朽化、土づくり等の課題はあるものの、産地形成を維持していくことが必要です。
 また、施設園芸のイチゴ、メロン、ホウレンソウ等は、産地として定着しており、これらの市場評価の高い作物の推進を図るとともに、観光と結びついた取り組みを展開していく必要があります。
 さらに、「二十世紀梨を大切にする条例」をもとに、二十世紀梨をまちの特産品として町民に再認識していただくとともに、梨、ブドウ、イチゴ、メロン、ホウレンソウ等は、町全体として地域活性化策や観光振興策との連携を図りながら、情報発信、地産地消へ向けた取り組みを図る必要があります。

特産梨等の産地活性化

 本町の名産である二十世紀梨は、明治39(1906)年に導入(湯梨浜町大字別所)され、平成18(2006)年に100年を迎えました。この間、生産者をはじめ、関係者のたゆまぬ努力によって、日本一の生産を誇る名産品に育ちました。梨の生産は、本町の経済基盤を築き、支えるとともに、山肌を利用した樹園地は、本町の緑豊かな景観を形成し、中山間地の維持管理や水の保全にも大いに貢献してきました。
 一方で、樹園地の改良や樹種転換、後継者の確保等の課題も多く抱えています。
 しかし、本町が特色のある、より魅力的な地域として発展していくためには、二十世紀梨や東郷池、はわい温泉・東郷温泉等は欠くことのできない大きな財産です。
 このため、これらの財産を町民あげて積極的に支援し、連携を図りながら活用していくことが、21世紀の地域づくりとして求められています。
 また、情報通信技術を活かした販売体制を進め、消費者ニーズに対応した産地戦略を推進していくことが重要です。

農業生産基盤の整備

 生産性を高める農業生産基盤整備の推進は重要です。平野部では、水田のほ場整備も中山間部を除き生産条件の改善は図られましたが、中山間部に広がる樹園地の多くは傾斜地であることから、基盤整備が遅れています。
 また、近年、老朽化した農道や用排水路等の土地改良施設の維持補修に係る経費が増大し、施設の長寿命化対策が必要となっています。
 多様化する農業生産を支える土地基盤整備は、引き続き地域の特性に応じた整備を推進し、生産性の向上による農家経営の安定化が必要です。

多様な農業者の育成

 本町の農業就業人口は、65歳以上の割合が6割を超えるなど、一段と高齢化が進み、農家人口及び農業従事者が減少しています。また、農業の将来を担うべき農業経営者や新規就農者の大幅な増加が見られず、後継者の確保も不十分な状況となっています。
 新たな食料・農業・農村基本計画では、今後、農業経営に関する国の施策は、各農家それぞれが創意工夫しながら、営農を継続・発展させることができるよう、現場の主体的判断を尊重した多様な努力、取り組みを支援していくこととされています。将来にわたる食料の安定供給のためには、担い手のみならず意欲のある多様な農業者の育成・確保が必要となっています。

遊休農地及び耕作放棄地対策

 農村環境が周辺住民へもたらす多くの恩恵は計り知れないものがありますが、就農者の高齢化や担い手不足により、農地の遊休、荒廃化が年々進行しています。
 また、イノシシやカラス、ヌートリア等有害鳥獣による農産物被害が拡大しており、農家の経営意欲の減退を招くとともに、離農の加速も懸念されています。
 そのため、被害発生箇所やその周辺を含めた地域ぐるみでの集団的な被害予防対策が必要となっています。

【施策の内容】

農産物の生産振興

 効率的な生産体制の確立と農地の有効利用を図るため、土地利用型作物を中心に、農作業の受委託や農地の利用集積を進めながら、集落営農組織や認定農業者等の担い手を中心とした地域農業を推進します。
 低農薬、有機栽培など、環境に配慮した農業を推進し、消費者が求め、消費者に選択される農産物の供給を目指します。
 果樹・施設園芸等の振興を図るため、品種改良・省力化・生産指導など、効率的な生産を推進するとともに、農産物の高品質化を推進します。
 町内で収穫される新鮮で安全・安心できる農産物を学校給食の食材として活用し、また、町内で供給・販売できる体制づくりを促進します。

特産梨等の産地活性化

 本町では、名産二十世紀梨を町民の誇りとして大切にし、地域の特産として振興していこうと「二十世紀梨を大切にする条例」を制定しています。産地復活のため、町民・生産者・関係者との連携により、元気な産地づくりを進めます。
 梨生産の省力化を進めるため、おさゴールド二十世紀など、耐病性品種の導入促進、また、樹園地の平担化を推進し、果樹産地としての地域向上と活性化を図ります。
 日本の梨産地として、東郷梨若がえり運動を推進し、果樹園の老木に対して低コスト生産が可能な優良品種へと改植を進め、生産の安定と品質の向上に努めます。
 本町特産の二十世紀梨、ブドウ、イチゴ、メロン等の果物、ホウレンソウ等の野菜を1年通して旬の時期に提供する果物暦を作成し、販売・PR活動を行うことなど、果物・野菜の販売促進を図ります。

農業生産基盤の整備

 農産物の流通と農村地域の生活基盤の改善等に益する農道や樹園地地帯における営農労力を軽減するための農道網など、それぞれの目的にあった整備を推進します。
 老朽ため池の整備を推進し、農業用水の安定確保を図るとともに、防災上の観点から放置ため池の対策を講じます。
 水田の農業基盤については、効率的な用水確保と干ばつ被害の解消を図るため、用排水路整備を推進します。
 羽合堰、羽合用水に見られるように、老朽化した土地改良施設の長寿命化対策及び改修を推進し、住みよい農村環境をつくるとともに、東郷池の水位上昇による水田等の冠水被害対策として、橋津川の適正管理を関係機関に働きかけるなど、農業環境の整備、充実を図ります。

多様な農業者の育成

 高齢者の豊かな知識と経験を活かすとともに、女性の農業における役割の重要性から、適切な研修の実施等活動の助長を促し、地域農業の担い手として町と農協が一体となって育成に努めます。
 現在、町内にある5つの生産組織の持続的発展を推進するとともに、「集落の農業・農地は自分たちで守る」地域農業を醸成し、集落営農の組織化を促進します。
 地域のリ一ダーとして、また、集落営農の中核となる人材を育成確保するため、引き続き支援措置を講じて認定農業者の確保に努めるとともに、町認定農業者協議会と連携しながら、農業経営基盤強化促進法に基づいた本町の魅力ある農業振興を目指します。
 意欲ある就農者(U・J・Iターン等)に対して、状況に応じた生産技術や農業経営の方法を学ぶ講習会等の実施、就農者の支援事業を推進します。

遊休農地及び耕作放棄地対策

 農地の貸借については、安全安心な利用権設定事業を推進するとともに、農地の売買を円滑に進める農地保有合理化事業の推進に努めます。
 また、集落等の営農組織の育成を進めるとともに、農作業の受委託を促進し、農地の有効活用を図ります。
 さらに、認定農業者、担い手農家等へ農地の利用集積を促進します。
 町内全域で発生、拡大している有害鳥獣の農作物への被害を減少させるため、電気柵、ワイヤーメッシュ等侵入防止施設の整備及び有害鳥獣の捕獲体制の整備を図りながら、被害拡大防止に取り組みます。


地産地消
地域生産地域消費の略語。地域で生産された農産物や水産物等をその地域で消費すること。
U・J・Iターン
Uターンとは、地方で生まれ育った人が都心で一度勤務した後に、再び自分の生まれ育った故郷に戻って働くことを言う。Jターンとは、地方で生まれ育った人が一度都心で働き、その後また故郷とは違った別の地方に移住して働くこと。Iターンとは、生まれ育った場所以外に転居、就職すること。