策定

5.まちづくりの課題

 時代の潮流や本町を取り巻く社会経済の諸情勢、町民アンケートの結果などを踏まえ、主な課題を次のように整理します。

(1)少子・高齢化への対応

 本町の高齢化の進行は急速に進んでいます。2004(平成16)年10月1日現在の高齢化率は25.8%と、鳥取県の平均(23.6%)を上回っています。なかでも、泊地域、東郷地域では高齢化率が高くなっています。
 少子・高齢化に対応していくためには、財政負担を含めて、行政のみでは解決できない問題であることから、地域全体でお年寄りを支えることが重要です。そのため、町民と行政、NPOやボランティアなどが一体となることが急務です。
 一方、合計特殊出生率は横ばい傾向にあり、2002(平成14)年では、鳥取県は1.51、本町では羽合地域2.01、泊地域1.96、東郷地域1.51となっています。それぞれ、鳥取県平均よりは高くなっていますが、年々少子化が進んでいます。
 子どもの減少は、地域の活力の低下につながるばかりでなく、将来的に、年金や介護などの社会保障システムへの影響も懸念されることから、子育て支援など少子化問題に積極的に取り組んでいくことが必要です。

(2)循環型社会の構築と自然環境の保全

 本町は、東郷湖をはじめ、海、山、川と緑豊かな自然環境に恵まれており、この環境を子どもや孫の世代に残していかなければなりません。
 そのためには、自然環境の保全とともに、省資源・エネルギーなど地球環境にやさしい取り組みを積極的に進めていくことが必要です。
 これまでの社会経済活動を見直し、町民や企業、行政などそれぞれが、地球環境問題を身近な問題として捉え、地球環境に対して負荷の少ない資源循環型社会を構築することが急務です。

(3)高度情報化への対応

 パソコンなどの情報通信機器が急速に普及し、町民生活に欠かせないものとなっており、今後も情報化が進むと考えられます。
 したがって、町民生活の利便性の向上を図るために、ITの整備や環境づくりが求められています。
 また、行政サービスにおいても、より質の高いサービスの提供を進めるために、各種申請手続きの電子化や行政内部における情報化、インターネットCATVなどを利用した行政情報の発信や町民からの意見の受信など、高度情報化に対応した電子自治体の構築が課題となっています。
 一方、個人や世代間などでの情報格差(デジタルディバイド)や個人情報の保護、セキュリティーの強化などの取り組みを進めていくことが急務です。

(4)特色ある教育の推進

 ゆとり教育の是非が問われる教育制度の変化、国際化や高度情報化の進展など、教育を取り巻く環境の変化は急速に進んでいます。
 その中で、将来を担う子どもたちが、さまざまな体験や交流を通じて、自分を大切にし、他人を尊重しあえる豊かな人間性を育むことのできる環境づくりが大切です。
 そのためには、地域性を生かした特色ある教育の推進や基礎学力の定着など学校教育の充実はもとより、学校や家庭、地域が連携して、子どもたちを育てる環境づくりを進めていくことが必要です。
 また、ライフスタイルの多様化は、精神面での豊かさや生きがいのある人生を求める人々の学習意欲を増進しました。特に、お年寄りが今後増加する中、お年寄りの社会参加に対して、生涯学習の推進は大きな期待がもたれます。
 そのためには、多種多様な講座・教室の開講など生涯学習内容の充実はもとより、活動の中心となる指導者やリーダーの育成・確保、学習成果を発表できる場の確保などが求められています。

(5)だれにもやさしい保健・医療・福祉の推進

 少子・高齢化の進行は、子育て支援や高齢者福祉に関する施策や事業の充実を必要としています。
 子育て支援では、乳児保育や延長保育、一時保育などの多様な保育サービス、子育て支援センターやファミリー・サポート・センターなどの施設整備の充実など、安心して子育てできる環境が求められています。
 一方、高齢者福祉では、在宅介護サービスや施設介護サービスの充実はもとより、生きがいづくりの推進や就業機会の提供など、さまざまな施策を充実させていくことが重要です。
 また、ノーマライゼーションの考えのもと、だれもが普通の生活ができるような地域社会づくりを進めるために、地域福祉や低所得者福祉、ひとり親家庭対策などを進めていくことが必要です。
 さらには、保健・医療と福祉が連携し、健康づくりや疾病予防、各種検診など、町民の一人ひとりが元気で暮らせるような取り組みも求められています。

(6)若者定住対策の推進

 羽合地域ではやや増加傾向にあるものの、泊地域及び東郷地域では人口が減少しており、特に若者の流出によるまちの活力の低下が懸念されています。
 将来を担う若者が、活躍することができる就業の場を確保し、本町に定住することが大きな課題です。
 このため、地域の特性を生かした産業振興や高付加価値型の産業の育成などに努め、雇用の創出を図ることが重要です。
 また、若者だけでなく、定住者の増大を図るために、快適で安全な住環境の創出や、子どもやお年寄り、障害のある人などにやさしいまちづくりなど、だれもが住み続けたいと思えるようなまちづくりが求められています。

(7)産業の振興

 本町の産業は、二十世紀梨を中心とする果樹農業、東郷湖や温泉を活用した観光産業などが基幹産業となっています。しかし、後継者不足や観光客の減少などにより活力が低下しています。このため、既存産業の振興や新規産業の掘り起こし、後継者の育成などによりにぎわいと活力ある産業の振興が課題となっています。
 また、郊外型大型店舗の進出などの影響により、JR松崎駅周辺の商店街においては空き店舗が増加しており、商業の再生、振興が緊急の課題となっています。
 活力ある産業を育成していくためにも、地域の特性を生かした新たな産業の創出や高付加価値型の産業の育成、ベンチャー企業に対する支援などに取り組む必要があります。
 あわせて、地場産業の活性化や起業家支援などによって、雇用の創出を図っていくことが重要です。

(8)安全で災害に強いまちづくりの推進

 本町では、地震や台風などの自然災害は比較的少ないものの、南海地震などの大規模な災害も予想されることから、災害を想定した定期的な防災訓練や防災意識の啓発、消防、救急などの施設・資機材の充実及び避難地などの整備が必要です。さらには、広域的防災体制の確立を行うとともに、各地域においての自主的な防災組織の整備や地域コミュニティーの充実による地域力の強化が求められています。
 防犯に対しては、全国的に犯罪が多発、多様化している状況にあり、犯罪防止に対する一人ひとりの意識を高めていく必要があります。特に、青少年の犯罪が急増しており、家庭や地域、警察や関係団体と連携するなど、地域ぐるみの取り組みが求められています。
 また、交通安全は、交通事故に占めるお年寄りの割合が高い状況にあり、関係機関と連携して交通安全意識の高揚を図るとともに、さまざまな施設のバリアフリー化を推進するなど、すべての町民が安心して通行できる交通環境づくりが必要です。

(9)住民参画社会の推進

 地方分権が進む中、自己決定と自己責任に基づいて、地域を運営していくことが、地方自治体には求められています。
 本町では、移動町長室、町民の声の箱設置など住民参画の機会を設けていますが、今後も住民が参画しやすいような手法の整備や充実を図っていく必要があります。
 また、高齢化の進行などにより社会的な弱者が増加することから、地域コミュニティーの強化や町民、NPO、ボランティアや企業などがそれぞれの役割を発揮しながら、連携してまちづくりに参画できる仕組みづくりが必要です。


NPO(再掲)
行政や民間企業に属さず、社会的に必要な公益的活動をする市民による非営利の民間組織を意味する。
合計特殊出生率(再掲)
ある年における15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した数値。一人の女性が一生の間に生む平均の子ども数とも考えられ、この数値が、おおむね2.08を下回ると、将来、人口が減少するとされている。
インターネット(再掲)
個人や企業、大学など全世界のネットワークを電話回線や専用線で相互接続したコンピューター・ネットワークのこと。
CATV
CAbleTeleVisionの略。有線を利用したテレビ配信システム。特定の受信者に対して、電波の代わりに有線を利用して番組を配信する。
セキュリティー(再掲)
安全、安全保障、保安、防犯、コンピューターを利用するうえでの安全性。
ライフスタイル
生活様式。衣食住などの日常の暮らしから、娯楽、職業、居住地の選択、社会とのかかわり方まで含んだ、広い意味での生き方。
一時保育
週3日程度のパートタイム就労に対応した「非定期的保育サービス」や、保護者の傷病などに対応した「緊急保育サービス」などを提供する保育事業のこと。
ファミリー・サポート・センター
子育てや介護に関する地域住民相互の援助体制。子育てや介護の援助したい・されたい住民を会員登録し、保育園時間外や学校放課後の一時預かりや送迎、寝たきり高齢者などの食事、通院や買い物の付き添いなどのサービスを有償ボランティアが行う。
ノーマライゼーション
どのような障害を持つ人であっても特別視せず、社会に生活する個人として、一般の社会に参加し、行動できるようにすべきであるという考え方。
ベンチャー企業
新しい技術や高度な知識を活用して創造的・冒険的な経営を展開しようとする新規小企業。
バリアフリー
障害のある人やお年寄りの生活や活動に不便な障害を取り除くこと。