第4編 民俗
第5章 民謡
第2節 祝儀唄

地しめ唄
 家の普請に先立って、土地の低い所は土を運び埋め立てた。その部分を「当座の石」を用いてつき固める作業が必要であった。この石は重さ25〜30キログラムで、これに取り付けた7、8本の綱を1人ずつが持ち、一斉に引き上げては打ち降ろし、地を固めた。この時地しめ唄が歌われた。整地後さらに、柱下に当たる場所に土台石を据えた(第2章第3節参照)。どうづきやぐらを組み、石を固定させる作業にもこの唄が歌われた。
 このように、地しめ唄は、元来労働歌であるが、地固めという縁起のよい唄であることから、婚礼などの宴席でも歌われ、祝儀唄の中にも加えられる。
(歌詞)
○石になりたや当座の石に ソリャ当座の石に
  アー当座若い衆の力石 面白や
     (全員)ハーヨイヤサー ヨイヤサー
          ヨイヤサー ヨイヤサー(以下、はやし省略)
○目出度(めでた)目出度が三ツ四ツ五ツ ソリャ三ツ四ツ五ツ
  アー五ツ重なりゃ 五葉の松 面白や
○こちの屋敷は目出度い屋敷 ソリャ目出度い屋敷
  アー鶴と亀とが舞をする 面白や
○こちの屋敷は目出度い屋敷 ソリャ目出度い屋敷
  アー茗荷(みょうが)目出度や 蕗(ふき)繁昌 面白や
○こちの屋敷は目出度い屋敷 ソリャ目出度い屋敷
  アー四角四面の中高で 面白や
○ここは大隅鬼門に当たる ソリャ鬼門に当たる
  アー悪魔払いの厄柱 面白や
 ここに掲げた歌詞は、必ずしも最初から順番に歌われるものではない。歌い手も決まっていなかった。作業をする人たちが、どれかを選んで歌い続けた。唄が上手だったりすると、別の人が「面白いぞェ今の唄返せ ソリャ今の唄返せ」と歌って、その唄の後節だけを再度歌わせた。