第4編 民俗
第5章 民謡
第2節 祝儀唄

なごや
 昔の結婚式は婿の家で行われた。夕方、花嫁は先祖や両親に別れを告げて出立し、仲人に手を引かれながら、長持担ぎの人足を従え婚家に向かった。この道中に歌われたのがなごや(長持唄)である。
 花嫁が家族や生まれ育った土地に別れを惜しみ、めでたい中にも知らぬ土地に赴く不安な心情などを歌ったものである。
(歌詞)
[出立に歌われる唄]
○今日はナァー 日もよしヨー ハァー天気もよいし
  結びナァー 合わせてヨー ハァー縁となるナェー アヨイヨイ(以下、はやし省略)
○もはやナァー 行きますヨー ハァー二親さまヨー
  永のナァー お世話にヨー ハァーなりましたヨー
○蝶よナァー 花よとヨー ハァー育てた娘
  今日はナァー 晴れてのナー ハァーお嫁入りだヨー
○もはやナァー 行きますヨー ハァー皆さまさらば
  こんど来る時ゃヨー ハァー孫連れてヨー
[道中に歌われる唄]
○ここはナァー 大阪(だいさか)ヨー ハァー一人じゃ越せぬ
  待ちてナァー 殿御さんにナー 手を引かれよナー
○ここはナァー 播州のヨー ハァー舞子が浜でヨー
  沖にナァー 見えるはヨー ハァー淡路島ナーヨ
○花のナァー 蕾(つぼみ)をヨー ハァー植えかえられて
  知らぬナァー 他国でヨー ハァー花咲かすヨー
○ここはナァー 当所のヨー ハァー村中なれど
  一つナァー やりましょう ハァー先ずは御免ナーエ
[婚家に到着の唄]
○もはやナァー 来ましたヨー ハァー殿御の家に
  後をナァー 頼んだヨー ハァー殿御さまヨー
○門のナァー 構えはヨー ハァー千石大名
  内にナァー 入ればヨー ハァー二千石ナーヨ(あるいは五千石)
○こちのナァー 嫁御はヨー ハァー天王寺蕪(かぶ)でヨー
  内にナァー 入ればヨー ハァー座り蕪だヨー
○しゅうとナァー 大黒ヨー ハァー婿さん恵比須
  来たるナァー 嫁御はヨー ハァー福の神ナーヨ