第四編 民俗 第四章 人の一生 第三節 結婚 嫁入り 嫁入りは夕方行われた。花嫁の衣裳は白無垢の着物の上にすそ模様を着、角隠しをかぶった。嫁ぎ先が村内の場合は歩いて行ったが、村外の場合は人力車、のちには自動車に変わった。荷物の人足などがなごや(長持歌)を歌いながら道中した。家を離れるときは、両親などに別れを告げる文句を悲しく歌い、婚家に近づくと家の繁栄をたたえる文句を歌った。なごやの歌詞は第五章第二節に掲げている。村外に行く場合は、婚家の近くの中宿(オチツキともいう)で休息してから入った。村人たちが大勢集まって花嫁を歓迎した。嫁入り道具はたんす、長持、鏡台、重ねだらい、裁縫箱などであったが、昔は嫁入りの時ではなく、結婚後一年以内においおい届けられた。嫁入りと同時になったのは大正時代に入ってのことである。 花嫁が婚家に近づくと、集まった人に嫁の土産のせんべいが配られた。嫁が座敷から家に入り一休みしたあと祝言が行われた。三三九度の夫婦の杯、婿の両親と嫁との親子の杯が交わされた。杯に酒を注ぐ役をのしふりといい、二人の女の子が務めた。 なお、嫁入りの際、実家方から花嫁の世話をする婦人が同行する風習があった。これをアリツケガクサンという。夫婦仲が有り付いたか(円満にいったか)どうかを見届けるため、数日間滞在したという。 |
|||
|
|||