第四編 民俗 第三章 生産・生業 第二節 漁労 一 姿を消した漁法 大網漁 フナの大網〈おおあみ〉漁は、少なくても舟六隻、漁師八人を必要とする大掛かりな漁法である。長さ一〇〇メートル前後の大網を仕掛け、固定した二隻の舟で綱を引く。大網が近づくにつれて舟の回りにしりかけ網を、さらにたぐられた大網の外側をほて網で囲い、魚が逃げないようにする。特にほて網を操る漁師には熟練した技術が求められたという。 寒ブナのシーズンである十一月から二月にかけて、毎日のように操業された。朝八時ごろから夕方四時ごろまで、一日平均八回ぐらい繰り返された。一回の網で一〇〇貫(三七五キログラム)ものフナが獲れたこともあった。 この漁法は他村では行われず、松崎の漁師の専門であった。最盛期には三組が操業し、時には中興寺や引地などに手伝いを頼むこともあった。しかし、人数の確保が難しいため、近年は繰業されていない。 |
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