第四編 民俗
第一章 年中行事
第四節 秋の行事

亥の子
 亥〈い〉の子は、歳徳さんが田の収穫を見届けて家に帰られる日を祝う行事である。十月のうちに、十二支の亥の日が二回ある年は最初の日(一番亥の子)を、三回ある年は中の日(二番玄の子)を祝った。家々では、その日の夕方に亥の子もちをついた。最初のうすは供え用、あとはぼたもちにした。うすはすぐには片付けず、翌朝に回した。これは、豊かな収穫があり、もちをつき得たことを歳徳さんに見てもらうためといわれた。
 子供たちは(注)亥の子づきをして家々を回り、もちをもらって歩いた。野花では太平洋戦争後まで続いていた。この日にこたつを出すと、火難を免れるともいわれた。また、強い風が吹き荒れることが多く、そんな日を「亥の子さんの荒れ」といった。
  (注)ミョウガやズイキの茎を入れて作った亥の子づっとで、玄関先の土間を打ちながら、「亥の子さんの晩に、玄の子もちつかんやつは、鬼生め蛇〈じや〉生め、角の生えた子生め」とはやし立てる風習。


亥の子づき


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