第四編 民俗
第一章 年中行事
第三節 夏の行事

七夕
 七月七日は七夕〈たなばた〉である。この日、牽牛星と織女星が天の川を渡り、年に一度の逢瀬〈おうせ〉を楽しむが、雨が三粒でも降ると天の川は洪水となり、逢えなくなるので雨が降らないよう祈った。
 前日、里芋の葉にたまった露(野花などでは稲の露)ですった墨で、五色の紙に「天の川」、「七夕」などのほか、願い事などを書き、ササ竹二本に結び付けた。竹の先端には、「天の川扇の風に霧〈きり〉晴れて空澄み渡るかささぎの橋」「七夕やばたばたするな瓜もなすびもみな転ぶ」などの歌を書いたしんばたを付けた。半紙を折り、切り目を入れたアミなども付け、前庭に立てて夕暮れを待った。
 お供えは、座机にキリや里芋の葉を敷き、スイカ・ウリ・トマト・キミ(トウモロコシ)・ホオズキなどと一緒に小豆飯を供えた。ナスビに竹の足を付け、牛にかたどって供えたりした。明かりは盆ちょうちんに灯をともした。子供たちは、カラスウリをくり抜いてウリちょうちんを作り、中にろうそくをともした。スイカなどは供え下げといって、その日のうちに家族で食べた。
 藤津では、ヒコボシ・オリヒメが会うと病気が流行するといい、雨が降るのを望んだ。この伝承は八頭郡などに多くみられる。
 七日の朝は七夕送りである。七夕竹を川や池に流した。この日は井戸替え(掃除)の日でもあった。組井戸(共同井戸)では、関係者が集まって作業をした後、酒を井戸に注ぎ水清めの祝いをした。川水もよく使ったから、いとば(洗い場)にアスナロの枝を立てて水神さんを祭った。


七夕祭り


<前頁
次頁>