第四編 民俗
第一章 年中行事
第二節 春の行事
(二) 三〜四月

ことの日
 三月四日のことの日は、農事に取りかかる最初の大切な日で、古くは家ごもりをしたともいわれる。神様に二食分のごちそうと、カヤで作ったことばしを供えた。家族もことばしを使って食事をしたが、「こと魚」といって必ず魚を食べることとし、カレイを食べるものだと言い伝えられている。
 食事の後ワラ束を三〇センチメートルほどに切り、両端をくくって「ことづっと」を作り、中に神様のお供えや、家族が前もって残しておいた料理も入れ、縄二本で屋敷内の柿の木につるした。二本の縄の間には、家族が使ったはしをはしご段のように付け、一番上に神様のはしを取り付けた。
 ことづっとは、鳥が早く来て食べるのがよいとされ、また、三年分連らなると家が繁盛するともいわれた。
 ことは一軒でするものではないといい、この日できない家は隣家に待ってもらって、後日一緒に行った。羽衣石では端午の節供の翌日にことをする風習があった。節供の翌日に行うという点では共通している。
   
<前頁
次頁>