第四編 民俗
第一章 年中行事
第二節 春の行事
(一) 二月

涅槃会
 二月十五日は釈迦〈しゃか〉入滅の日である。各寺院では法会(涅槃会〈ねはんえ〉)が行われた。涅槃図を掲げ遺教経〈ゆいきようぎよう〉を唱えて、お釈迦さんの遺徳を追慕した。参拝者には茶菓などの接待がなされた。涅槃図は、釈迦が沙羅双樹〈しやらそうじゆ〉の下で入滅する様子、すなわち、頭を北に顔を西向きにして横臥〈おうが〉し、その周囲に弟子をはじめ、天竜鬼畜など五二類が集い、泣き叫び悲しんでいる状態を描いたものである。
 家々ではだんごを作り、小豆と一緒に煮て食べた。これをねはんだんごという。豆もいって供えた。この日を「にはんさん」というのは、ねはんがなまったものである。僧家では一日二食であったことから、これに倣ってこの日を二食(二飯)にする家もあった。
   
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