第2編 歴史
第4章 近代・現代
第5節 農林水産業
 2  水産業
(1) 東郷湖漁業協同組合の変遷

東郷湖における漁業権
 東郷湖は古くから、フナ・ウナギなどの淡水魚の生育及び川藻の繁殖に適しており、沿岸住民は多くの恩恵を受けてきた。このため、沿岸の村々では、藩政時代池役と称する税金を藩に納めている。漁業など池から受ける収益に課せられたのである。池役を賦課されていたのは、藤津村・引地村・野花村・門田村・上浅津村・下浅津村・南谷村・上橋村及び松崎町の1町8カ村であった。従って、これ以外の村には、東郷湖における漁業権は認められていなかったと推定される。
 明治12年から16年にかけて、宮内村は再三再四東郷湖における(注)採藻採泥の許可願を県に提出しているが、許可になっていない。既得権のある周辺の村の賛成が得られないためであった(資料編108号)。このような藩政時代の慣行はこののちも長く続いた。宮内が漁業組合に加入したのは昭和48年のことである。
 東郷湖における漁業権を占有していたのは漁業協同組合である。以下、漁業協同組合の変遷のあとをたどってみる。主として東郷湖漁業協同組合(以下、「東郷湖漁協」あるいは単に「漁協」と略称する)所蔵の資料を参考とした。
 (注)東郷湖に自生する藻(特にスゲモク)は畑の肥料として重宝され、魚に劣らぬ重要な資源であった。また、採泥は池の周辺の新田造成のために必要であったと思われる。
   
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