第2編 歴史
第4章 近代・現代
第4節 官公署と医療機関
 1  官公署
(1) 警察官駐在所

巡査の任務
 町域内に初めて設置された警察活動の拠点は、明治9年3月の松崎宿・巡査仮屯所である。明治20年代には、松崎・方地・長和田に駐在所が設けられた。その沿革については後述する。
 明治・大正期における駐在所の巡査は、地方の名士の1人であったとみられる。前掲「舎人村誌巻上」によると、漆原婦人会の講演会の講師や、同村青年会員の撃剣指導者などとして招かれていることが知られる。また、「東郷小学校沿革史」(同校所蔵)には、大正年間に天皇・皇后両陛下の御真影を拝受するため、学校長や村長と共に巡査が郡役所に出頭した記録も見られる。このほか、前節「財政と村政」で述べた伝染病の予防対策では、役場と共に警察が深くかかわっていた(資料編107号4を参照)。防犯など治安の維持のほか、衛生行政の一役も担っていたのである。
 警察制度や本県警察の組織の変遷などは、ここで触れないので、県警察本部発行の『鳥取県警察史』(以下『県警察史』と略称する)などを参考にされたい。
 なお、白石・福井克之所蔵文書のなかには、明治6年前後の犯罪者の指名手配書が数通残っている。これらは当時の戸長に配布されたものと思われ、戸長にも犯罪者逮捕に協力する義務があったとみられる。