第2編 歴史
第2章 中世
第5節 中世の信仰・その他

漆原・方地にまたがる「厚垣」
 野方の宝垣より更にスケールの大きいのは、漆原と方地にまたがる「厚垣」である。野方と同じく「竹ノ下」がある外、「蔵ノ下」「馬場」などの地名が隣接する。「十万寺」は居館主の菩提寺であろう。北側に「北山」があるのは、野方の場合と同様に厚垣を中心とした命名とみられる。柳田国男は館の立地条件として、「(イ)土地高燥快活にして平素の生活に適し、(ロ)水田に適する平地があって多くの農民を住ましめ得、(ハ)また卑湿にして敵の攻めよするに不便なる低地をひかえ、(二)かねて展望の都合よろしく、(ホ)なお戦利あらざる場合に静かに立ちのきうる山地と一方に連絡し、(ヘ)その上に清浄なる飲水と燃料がある」ことを挙げている(柳田国男『地名の研究』)が、「厚垣」及び「宝垣」などは、ほぼこの条件を具備すると考えられる。
 町域内に「垣」の付く地名は、このほか、北福に「芦垣」、漆原に「唐王垣」、白石に「番匠垣」、川上に「菊茂垣」、長和田に「宇坪垣」、小鹿谷に「垣ノ内」などがある。


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