第2編 歴史
第2章 中世
第2節 鎌倉・南北朝時代
 1  東郷荘

東郷荘の分割支配
 東郷荘は下地中分によって領家・地頭の両者に分割され、それぞれの領分については一円支配が成立したとみられる。従来、一般的にこのような下地分割を、すべて地頭側の勝利とみる傾向があったが、実はその逆の場合も多かったといわれる。すなわち、この下地分割は、荘園全域に及んでいた地頭の在地領主的支配を地域的・部分的に否定するものであり、地頭勢力の後退につながることもあったという(渡辺澄夫「公武権力と荘園制」『岩波講座日本歴史』5所収)。東郷荘の場合、そのどちらとも判断する史料はないが、公式に地頭勢力による土地の一円支配が認められたことは、それなりに重要な意義があったと思われる。
 絵図はまだ多くのことを秘めているのかもしれない。それらを読み取って、さらに研究を深めてゆくことが必要であろう。


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