第2編 歴史
第2章 中世
第2節 鎌倉・南北朝時代
 1  東郷荘

東郷荘絵図
 東郷荘という荘園の存在を証する最古の史料として、普通、「東郷荘絵図」と呼ばれる絵図がある。荘園の下地中分を示す代表的な絵図で、正式には「伯耆国河村郡東郷荘下地中分絵図」と称される。中学・高校の日本史の教科書に、しばしばその図版が掲載されている。今から700年余りも前に描かれた絵図が伝えられていることは、全国的にも例が少なく、貴重な史料である。
 この東郷荘絵図(以下、絵図と略称する)は、もと京都の松尾大社の所蔵であったが、現在は大阪府堺市の柳沢迪子所蔵となっている。模写は数点あるが、中でも東京大学史料編纂〈さん〉所の手になるものがよく紹介されている。同所の模写は精密なもので、虫食い・折り目の跡に至るまで忠実に再現してあるので、原本と寸分の相違もない(口絵のカラー写真参照)。大きさは縦127ab、横98abぐらいである。
 東郷町内にも小鹿谷の荒井家、東郷小学校などに数点の模写がある。
 以下、この絵図について検討してみたい。


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