第2編 歴史
第1章 原始・古代
第4節 古墳時代
 4  主な遺物

町内の銅鏡
 山陰考古学研究所の『山陰の前期古墳文化の研究I』によると、町内から出土した鏡は6面ある。このうち、出土遺跡名が明らかなのは、野花・北山1号
墳の龍虎鏡(舶載鏡)と同27号墳(中期古墳の変形四神四獣鏡(製鏡)の2面である。
 北山1号墳の箱式石棺内から出土した龍虎鏡は、直径13.8センチメートル、重さ445グラムで全面に薄い緑青を帯びている。背面には、1個の玉を挟んで竜と虎が相対した文様がある。また、幅7ミリメートルの銘帯に右回りに刻まれた銘文が見える。不明な部分が多いが、銘文は、7言句4句に「兮」を加えた次の29字である。
 尚方作竟大□母□〈カ〉傷〈カ〉  巧工□刻之〈カ〉□成〈カ〉□分〈カ〉□章〈カ〉
 □□□□□ □    □     □□ □□    □    □    □
 前掲書によれば、この銘文は、四神鏡などにも多用されるといい、典型的な常用句では、第3句以後、次のように続くという。
 左龍右虎辟不祥 朱鳥玄武順陰陽
 子孫具備居中央 長保二親楽富昌
 壽敝金石如侯王
 また、保育社刊『日本の古代遺跡9鳥取』によると、「尚方」は主に中国の秦・魏・晋・漢のころ、天子の剣や器物を作ることをつかさどった政府直属の鋳銅工場のことで、鏡もここで作られた。「竟」は「鏡」に通じる字で、鏡鑑の銘文にしばしば使用されるという。
 27号墳出土の変形四神四獣鏡は、直径が12.6センチメートル、重さは180グラムあり、彫りが深く、文様は鮮明である。四対の神像と獣形を配している。
 出土した遺跡名が不明な、残り4面の鏡を表3に示した。このほか、引地2号墳や藤津字「上野」から鏡が出土したという伝承があるが、詳細は不明である。


北山27号墳出土の変形四神四獣鏡
(東郷町教育委員会所蔵)
北山1号墳第2主体出土の龍虎鏡
(山陰考古学研究所蔵)

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