第1編 自然と地理
第1章 自然と環境
第3節 地質と資源
 4  温泉

温泉湧出の機構と泉質
 温泉が存在するための要因には、(1)熱源があること、(2)地下水が熱源の近くに到達できるような岩石の割れ目(断層)があること、(3)温められた温泉水の流出を防ぎ、上昇・湧出を助ける地質構造(不透水壁)が形成されていること、などが挙げられる。
 県内の温泉地に多く見られる特徴では、(1)熱源は花崗岩類の余熱に起因する、(2)花崗岩類に旧期の東西系の割れ目と、これに斜交する新期の割れ目が存在する、(3)浅い層に地下水が豊富にある、などが指摘される。すなわち、下位の温泉水が上位の地下水で加圧され、不透水壁に沿った割れ目から上昇・湧出すると考えられている(鳥取県教育センター刊『天神川流域とその周辺』)。
 東郷温泉は、花崗岩類・小鹿川火砕岩類・洪積層の各層に泉源のあることが知られ、いずれも松崎駅周辺の東西約一〇〇〇メートル、洪積層の各層に泉源のあることが知られ、いずれも松崎駅周辺の東西南北約三〇〇メートルの範囲内からくみ上げられている。地下温度の分布では、摂氏四〇度以上の地温帯が東西に少なくとも一〇〇〇メートル以上延びている。また、同八○度以上の高温部は、東西の断層とこれに斜交する断層の交差部分とほぼ符合する。これらの地熱によって温められた温泉水が、割れ目に沿って上昇してくるとみられる。
 東郷温泉は、ナトリウムイオン・塩化物イオンを主成分に、カルシウムイオン・硫酸イオンを副成分とする食塩泉である。胃腸病・リューマチ・神経痛・皮膚病などに効能があるとされる。

図4 東郷温泉の地下等温泉と断層
(『鳥取県温泉総覧』を基に作成)

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