第四編 民俗
第四章 人の一生
第五節 葬送

通夜・湯かん
 通夜には、親せきや近所の人が集まって念仏(南無阿弥陀仏)を唱えた。念仏を唱えることには、禅宗・浄土宗などの区別はなかった。血縁の濃い親せきは一晩寝ないで、死者のめい福を祈った。灯明や線香は出棺まで絶やさなかった。
 湯かんは一般に通夜の夜遅く、子・兄弟など死者に近い人の手で行われた。仏壇の前の床板を箕子に代え、その上で死体を洗い、髪やひげをそった。ただし、産後が悪くて死んだ婦人の髪はそらなかった。洗い湯は、最初におけに水を入れてから湯を注ぎ加減した。洗ったあとの湯は床下に流した。
   
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