第四編 民俗
第三章 生産・生業
第二節 漁労

漁場の呼び名
 東郷湖で操業する漁師の間では、漁場を指し示す呼び名が受け継がれている。その日の漁の行き先や、豊漁であった場所など、お互いの情報交換に古くから利用された呼び名である。ここでは当町の漁師の間で通用している呼び名を掲げた(羽合町の漁師が使う呼び名とは若干相違する)。
 これらのうち、長和田のキツネコロシ、藤津のナメラ、宮内のシイヤマなど周辺の陸上の小字名と同じものも見られる。町役場裏のリュウトウ、オオヒロマなどは明治時代の旅館の施設に因ったものであろう。宮内と藤津の境界付近のホトケでは、かつて仏像(現在、松崎の西向寺に安置)が漁師の網にかかったと伝承する。また、ケンギョバはキンギョバのなまりで、かつて禁漁区とされた場所であろう。それぞれの呼び方には、歴史的あるいは地理的な由来を秘めたものがある。
 なお、地図上の(2)〜(4)をヒノクチ、(44)〜(49)をヤマシタ、(52)〜(58)をマチウラと呼ぶ。また、東郷湖を三つに区分し、(24)と(41)の線の北側をシモガワ、羽合温泉の突端部と(8)の線の西側をウワテ、それ以外をドウナカと呼ぶ場合もある。
 以下、東郷湖の漁法を三つに大別して概観する。その記述は、旭・船木重正の談によった。

図4 東郷湖の漁場の呼称
1.クイノワダ 2.セノタマ 3.ユウワン 4.リュウトウ 5.オオヒロマ 6.カワジリ 7.ヒチジッケン 8.ヒキジマエ 9.ダイマン 10.ノキョウマエ  11.ナカノイワネ 12.ハッシャク 13.キツネコロシ 14.ナゴウタカワジ 15.ウメノキ 16.カドタカワジリ 17.ナガエブナト 18.オオクイノイリアンド 19.オオクイ 20.ロクロベ  21.モリドコロ 22.タケウチノミナミ 23.タケウチノミナミノケンギョバ 24.セガシラ 25.ハンダ 26.ナカジマ 27.シモマエ 28.ナンズ 29.カワグチ 30.カマガツボ  31.ダンダバナ 32.シイヤマ 33.ベンテンサン 34.ミヤド 35.ミヤドグチ 36.イセジ 37.タレメゾ 38.オワダ 39.シシマイワ 40.シミズ  41.ロクイワ 42.ホトケ 43.タドツ 44.オオバナ 45.ミナブクラ 46.ハチカワ 47.ナメラ 48.コオトシ 49.カワサキ 50.フジツマエ  51.サンマイワ 52.シロバナ 53.ヨロズヤサンデン 54.タミサウラ 55.カミウラ 56.ナカマチウラ 57.シンマチウラ 58.オヤスンド 59.ナカノカブ 60.セノエ  61.ケンザキ 62.ケンザキノアタマ 63.ナカジマガナリ 64.ユノマワリ 65.オキノケンギョバ 66.カワジリオキ 67.ソトワタリ 68.ケンギョバ 69.ウチワタリ 70.コイケ(旭・船木重正から聴取卯)


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