第四編 民俗
第二章 衣・食・住
第三節 住居
 三  建築の工程と儀礼

建前と棟上げ
 建前は大安吉日を選んで行った。当日は多くの人手を要したので、親せきからは男女一人ずつ、部落全戸から男一人ずつが手伝いに来た。大部落では人数が多過ぎるので、半分に区切っている所もあった。大黒柱の前にお神酒と干魚を供えたあと、お神酒を注いで清め、作業に取りかかった。
 最初に大黒柱を建てた。土台入りの建築になってからは、土台、本柱の順であった。梁などの大きな材木は、さいとうを使って押し上げた。草屋根の家は叉首〈さす〉(材を合掌〈がつしよう〉形に組んだもの)を組むまで、かわらぶきの家は屋根地打ちまでが一日の工程であった。
 建前が終わると、引き続いて棟上げ祝いに移った。土間にむしろを敷き、関係者が車座になり祝宴を開いた。特別な祝い歌はないが、縁起のよい地しめ歌や〈さかき〉歌などが歌われた。


図3 さいとう
2本の竹に綱を渡したもの。
材木を架けて数人で持ち上げた。


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