第四編 民俗
第一章 年中行事
第三節 夏の行事

蓮華の日
 六月十五日は蓮華〈れんげ〉の日といった。山陰地方にだけ行われた行事で、麦を神社に供えて祈念する日とされている。家庭では小麦粉を練り、中に小豆あんを入れ、ミョウガの葉に包んでせいろうで蒸したり、鉄板で焼いたりして食べた。鉄板で焼いたものを「カーラ焼き」といい、へかやき・かたやきともいった。この日は必ず小麦を食べる日とされ、小麦を食べない者はオナカジ(ウジ虫)になるといった。
 倉吉市新田の河原では、れんげ相撲があり、前夜は同じ場所でれんげ踊りと称して盆踊りが行われた。盆踊りのはしり(初物、すなわち初踊り)で、若者は出掛けて初踊りを楽しんだ。
 この日は田に入ることはもとより、田の水の見回りや水浴も禁じられた。川で泳ぐと、かわこ(河童〈かつぱ〉)にしりご(尻〈しり〉)を抜かれるといわれた。この時期は、北福の今滝の滝開きをはじめ、水神まつりの行事が多いことなどから、水神信仰に起因する日でもあろうと思われる。
 一方、京都の八坂神社で祗園神事が行われ、その分霊を祀〈まつ〉る白石では、区長宅に掛け軸を掛け、村人が参拝した。この日、キュウリ畑に近寄ることは禁じられていた。
   
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