第四編 民俗 第一章 年中行事 第二節 春の行事 (一) 二月 節分 節分は、せちぶん、おおとしともいい、立春の前日、すなわち大寒の末日にあたる。太陽の運行関係で決まり、普通は新暦の二月三日又は四日であるが、旧暦では正月が来ないうちに節分を迎える年もあった。もとは物忌みのために家にこもる日であったといわれる。しかし、その意味が忘れられて、今では邪鬼悪霊が入って来るのを防ぐための行事が、主流になっている。 夕暮れまでに、竹ぐしにひいらぎの葉と干したイワシの頭を刺して、玄関をはじめ勝手口、部屋の雨戸などに「クシャー、クシャー(臭いの意)」といいながら取り付けた。これをヤクサシといった。イワシのにおいに誘われた鬼を、ヒイラギのとげで刺して追い払うためといわれる。一般には鬼はイワシのにおいをひどく嫌うとされているが、本町では全く反対に伝えられている。 夜は家々で豆まきをした。いった大豆を一升ますに入れて神棚に供えたあと、年男が、「鬼は外、福は内」と部屋ごとにまめをまいた。大豆に蚕豆〈そらまめ〉やアメ玉なども混ぜた。 一方、神社では節分祭として厄落としの追儺〈ついな〉式が行われた。家々では、家族の数だけ割木を持ち寄り、境内やこもり堂近くで大きな火をたいた。この火にあたると、厄から逃れ、病気を防ぐことができるとされた。また、神社から配られた人形〈ひとがた〉の紙で身体をさすり、厄を移らせてから神社に持参した。神主は夜遅くまで氏子一人一人の厄払いの祈願をし、豆まきをした。氏子らは歓談しながら一夜を過ごす節分ごもりをした。寺院でも節分会〈え〉が行われ、読経と豆まきが行われた。 |
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