第四編 民俗
第一章 年中行事
第一節 正月行事
(三) 一月四日以降

鍬初め
 一月十一日は、「百姓の正月」ともいい、鍬〈くわ〉初めをした。山からカシ・クリ・タズなどの木を切って帰り、ススキなどを加えて束ね、さらにウラジロ・ユズリハ・大豆の枝・幣を取り付けて苗田に運んだ。明〈あ〉き方〈ほ〉に向かっておぶく米(神に供える米)をまき、しめ飾りを付けた新しい鍬で田を三回打ち起こした。最初の一打ちで「一鍬千石」、次に「二鍬万石」、最後に「三鍬で今年も豊年満作」と唱え、打ち起こした跡に用意した鍬初めの木を立てた。これを稲作の仕事初めとして、農作物の豊かな実りを祈った。
 この日、家の中が乱雑であれば、田の雑草が多く生えるといって、掃除に精を出した。羽衣石では、この日のほかに春亥の子の日にも行った。田の畔〈あぜ〉を少しはぎ取るように土を堀り起こしながら唱え言をした。


   
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