第2編 歴史
第4章 近代・現代
第5節 農林水産業
 1  農業
(1) 農業の概観

地主と小作人
 小作人とは、地主から耕地を借り、小作料を払ってその土地を耕作する者である。鳥取県においては、地主が年雇などの方法によって労働者を雇い入れ、自ら農業を営む、いわゆる「手作り経営」は、明治の末期には減少したといわれる。もともと、鳥取県では小作戸数の全農家に占める割合が大きく、しかも農地が少ないため小作料も高率であった。したがって、手作りによる収入より小作料に依存するほうが有利であったので、地主は所有地の大部分を小作人にゆだねる結果となった。いわゆる地主の寄生化が進んだのである。寄生地主の率も、鳥取県は全国平均をはるかに上回ったという(『鳥取県史近代第三巻経済篇』、以下『鳥取県史』と略称する)。明治44年の舎人村の自作・自小作・小作農別の戸数などは表のとおりである。小作農の戸数は全農家の45パーセントに達する。
 前掲「舎人村誌巻上」は、小作契約の期限、小作料の納入方法など明治末年ごろの慣習を記録している(資料編109号参照)。小作の条件は、地主との話し合いで個々に決められたものであろうが、おおよそは慣習によったと思われる。このほか、明治20年の小作契約書を資料編119号に収録している。
   
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