第2編 歴史
第3章 近世
第6節 近世の文化
2 俳諧
『文化俳人短冊帖』
浪花(大阪)の俳人松井三津人は、文化3年(1806)から4年にかけて、『文化俳人短冊帖』初・後編2冊を刊行した。その後編には、巻末に全国179名の俳人名簿を付し、そのうち91名の作品を載せている。全国といっても、大半は近畿以西の人たちである。その中で、伯耆22名・因幡28名の俳人の名が見え、国別にして圧倒的に多く、当時因伯で俳諧がいかに盛行したかが察せられる。その名簿の中に松崎の俳人3名の名がある。
鷺行 伯州松崎野口与八郎
青化 伯州松崎野口成栄
一扇 伯州松崎人立木分四郎
作品は青化のものが1句載っている。
草踏は田舎めきけり雉子の声 青 化
青化は野口重兵衛成栄と称し、野口理所蔵の「本野口家系概要」によれば、同家20代目に当たる。長じて町年寄を努め、直触・苗字帯刀を許された富商であった。明治2年(1869)75歳で死去した。同家には成栄の手になる「俳文紀行」や、俳人たちとの「寄贈句往来」などの冊子が保存されている。
鷺行・一扇については不明である。