2−1.町土利用の基本方針
町土の利用は、町土が現在及び将来における町民のための限られた資源であるとともに、生活及び生産など諸活動の共通の基盤であることを考え、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配慮して、健康で文化的な生活環境の確保と町土の均衡ある発展を図ることを基本理念として、総合的かつ計画的に行うものとします。
近年、本町を取り巻く社会経済情勢は、生活の多様化、日常生活圏の拡大、少子・高齢化や過疎化の進行などさまざまな変化が生じています。その中で、限られた資源である町土の有効利用を図り、安全で快適な町民生活の向上、定住人口の増加や産業の振興などによるまちの活性化が必要となってきています。
本町の特徴的な地域資源である山林、海、東郷湖などの自然は、魅力ある自然環境を形成していることから環境の保全を図る必要があります。また、東郷湖周辺においては温泉や観光施設も多く立地しているため、自然環境に配慮しながら自然と一体となった観光資源としての活用も図る必要があります。
また、農地と住民の暮らしが一体となった美しい農村景観は、保全を図る必要があります。
したがって町土の利用にあたっては、下記の事項に留意して、総合的かつ計画的視点に立った土地利用を図ります。
- @災害に強く安全で安心できる町土利用を図る
- A周辺市町との連携など広域的な視点から見た町土の有効利用を図る
- B本町の持つ歴史・文化的風土の保全や自然的・社会的条件を踏まえた個性ある景観の創造を図る
- C工場跡地など低未利用地及び耕作放棄地などの有効利用を図る
- D地球規模で環境への関心が高まる中、自然環境に配慮した持続的な発展が可能な町土利用を図る
- E農用地、森林の持つ多面的な公益的機能の維持を図る
- F農用地、森林、原野、宅地などの相互の土地利用の転換は、自然生態系や周囲の土地利用状況などを考慮し、慎重な配慮のもとで計画的に行う
2−2.利用区分別の町土利用の基本方向
(1)農用地
農用地は、食料の安定供給のための基礎的な土地資源であるとともに、町土保全・環境形成・都市との交流の場などの多面的な機能を有しているため、その機能が発揮できるよう計画的な利用・活用を図ります。
本町の基幹産業は農業であり、稲作を中心に果樹・園芸農業が展開されています。しかし、少子・高齢化はもとより、農産物輸入の増加や景気の低迷による農産物価格の不安定により、就業者の農業離れがいっそう加速されています。本町では、これらを背景に山間部を中心とする農地の荒廃が進んでおり、集落を基礎とした営農組織の育成や地域の担い手の育成に努める必要があります。
そのため、農作業の受委託、農地の利用集積を進め、効率的な生産体制の確立と農地の有効利用を図り、集落営農組織や認定農業者等担い手を中心とした地域農業を推進します。
また、二十世紀梨をはじめとする特産品の生産振興を図るため、町民・生産者・関係者との連携による元気な産地づくりを進めます。
(2)森林
町土の約5割を占める森林は、林業採算性の悪化などにより林業生産活動も停滞しています。また、担い手の減少と高齢化から適正な森林管理が困難な状況にありますが、森林は木材生産の場だけでなく、洪水や山崩れなどの災害を防止する町土保全、水資源のかん養、二酸化炭素の吸収及び保健休養の場など多様な役割を担っています。
そのため、適切な間伐や枝打ちなどの保全対策の推進により、森林の公益的機能の維持向上を図るとともに、松食い虫などの森林病害虫の防除など対策を講じます。また、造林事業に対する支援制度などの情報提供や担い手の育成や労働力の確保など林業生産活動の活発化を図ります。さらに、森林保護への啓発の推進や森林と人がふれあう場としての生活環境保全林の環境整備も図ります。
(3)原野
原野は、貴重な自然環境を形成しているものもあることから、生態系及び景観の維持などの
観点から保全を図ります。
(4)水面・河川・水路
@水面
本町は、県内三大湖沼の一つである東郷湖が町の中央に位置しています。
東郷湖は、貴重な自然環境を形成し、野生生物の生息地にもなっているため、保全を図ります。
また、東郷湖は年々汚染が深刻化していることから、今後は、塩分濃度の適切な維持のための調査や東郷湖浄化対策事業を推進するなど環境整備を促進し、他機関と連携しながら東郷湖の美化に努めます。
A河川・水路
本町に流れる天神川、橋津川、舎人川などの河川及び水路は、住民の生活にとって欠かせないものとなっています。
住民の安全を守るため、洪水など災害の危険性が高い河川は、災害の危険性を低減し、他機関と連携しながら治水機能の向上に努めます。
生活用水・農業用水としての水資源の保全や用水路などに要する用地の確保に努め、その役割を効果的に果たせる安定した各種用水の供給を図り、利水機能の向上を図ります。
また、生物の生態系に配慮するとともに、自然環境と調和した河川・水路の整備を図り、住民・来訪者が水に親しみを持ち、心が安らぐ憩いの場としての空間の創出に努めます。
(5)道路
道路は、住民が快適な生活をおくるうえでも経済発展のためにも、欠くことのできない重要な役割を担っています。
一般道路は、住民生活や経済活動が合理的に確保できるよう、必要な用地の確保を図り、道路の利用状況による道路の性格や地域の実情に応じた適切な整備を図ります。これらの整備にあたっては、環境の保全に十分に配慮し、計画的に進めます。
また、農道及び林道は、農林業の生産性の向上及び農林地の適正な管理を図るため必要な用地の確保に努めるとともに、その整備にあたっては、自然環境の保全に配慮します。
(6)宅地
@住宅地
高齢化、核家族化や居住ニーズの多様化などの近年の動向から、本町においても多様なライフスタイルに合わせた住宅の供給が必要となってきています。また、密集した住宅地も見られ、環境面や防災面で課題となっています。
そのため、地域の特性を考慮しながら、地域の均衡ある発展を目指し、快適な居住環境のために必要な用地の確保に努めます。
住宅地の整備にあたっては、災害防止に努めるとともに、自然環境の保全に配慮しつつ、ゆとりの空間の確保、バリアフリー化、福祉・緊急車両が通行できる道路、公園などの生活利便施設の整備など住みよい環境づくりを図ります。
また、民間の宅地開発を促し、望ましい居住水準と良好な居住環境が確保された宅地造成が行われるよう指導します。
A工業用地
近年の製造業を取り巻く環境は、国際競争の激化やデフレ経済の進行など極めて厳しく、設備投資の抑制や海外進出が進む中で、町内への新たな企業の誘致は難しいのが現状です。しかし、企業の立地は、町民の雇用の促進につながり、人口の増加、町の活性化へとつながっていきます。そのため、社会経済の状況や企業立地の動向などを把握し、自然環境などに配慮しながら、必要な用地の確保を検討します。
また、工場移転などに伴って生じる工場跡地は、良好な環境の整備などのため、有効利用を促進します。
(7)その他の用地
@公共用地など
文教施設、公園・緑地、厚生福祉施設や交通施設などの公共公益施設用地は、住民福祉の充実と向上に不可欠なものであり、住民生活や住民の価値観とニーズの多様化に対応しながら、環境の保全に配慮し、必要な用地の確保に努めます。
小学校の跡地利用は、町民の積極的な参画を図りつつあるべき方向を検討し、跡地の有効活用に努めます。
また、観光・レクリエーション用地は、余暇時間の増大や自然とのふれあい志向の高まりの中、本町の持つ自然的、社会的、歴史的特性を生かし、景観に配慮しながら計画的に整備します。
A海岸・湖岸地域など
海岸地域は、ハワイ、石脇などの海水浴場、東郷湖羽合臨海公園、白砂青松や鳴り砂の現象がみられる海岸など本町の持つ優れた自然環境を活用し、海岸環境の魅力向上に努めます。
東郷湖岸は、自然環境に配慮した整備を基本として東郷湖羽合臨海公園などを生かした東郷湖岸の魅力向上に努めます。
また、東郷湖を囲む東郷湖羽合臨海公園周辺には、多くの優れた観光資源があるため、東郷湖羽合臨海公園とそれら観光資源を有機的に結び魅力ある空間づくりに努めます。
さらに、環境を保全するため水域汚染の防止と水質の改善を図ります。