構想

3.土地利用の方向性

(1)基本方針

 近年、本町を取り巻く社会経済情勢は、生活の多様化、日常生活圏の拡大、少子・高齢化や過疎化の進行などさまざまな変化が生じています。その中で、限られた資源である町土の有効利用を図り、安全で快適な町民生活の向上、定住人口の増加や産業の振興などによるまちの活性化が必要となってきています。
 本町の特徴的な地域資源である山林、海、東郷湖などの自然は、魅力ある自然環境を形成していることから環境の保全を図る必要があります。また、東郷湖周辺においては温泉や観光施設も多いため、自然環境に配慮しながら自然と一体となった観光資源としての活用も図る必要があります。
 農地と住民の暮らしが一体となった美しい農村景観については、保全を図る必要があります。
 したがって町土の利用にあたっては、下記の事項に留意して、総合的かつ計画的視点に立った土地利用を図ります。

@災害に強く安全で安心できる町土利用を図る
A周辺市町との連携など広域的な視点から見た町土の有効利用を図る
B本町の持つ歴史・文化的風土の保全や自然的・社会的条件を踏まえた個性ある景観の創造を図る
C工場跡地等低未利用地及び耕作放棄地等の有効利用を図る
D地球規模で環境への関心が高まる中、自然環境に配慮した持続的な発展が可能な町土利用を図る
E農用地、森林の持つ多面的な公益的機能の維持を図る
F農用地、森林、原野、宅地等の相互の土地利用の転換は、自然生態系や周囲の土地利用状況等を考慮し、慎重な配慮のもとで計画的に行う

(2)土地利用の方針

@自然環境保全区域

 町土の約5割を占める森林は、林業採算性の悪化等により林業生産活動も停滞しています。また、担い手の減少と高齢化から適正な森林管理が困難な状況にありますが、森林は木材生産の場だけでなく、洪水や山崩れなどの災害を防止する町土保全、水資源のかん養、二酸化炭素の吸収及び保健休養の場など多様な役割を担っています。
 そのため、適切な間伐や枝打ちなどの保全対策の推進により森林の公益的機能の維持向上を図るとともに、松食い虫等の森林病害虫の防除など対策を講じます。また、造林事業に対する支援制度などの情報提供や、担い手の育成、労働力の確保など林業生産活動の活発化を図ります。さらに、森林保護への啓発の推進や森林と人がふれあう場としての生活環境保全林の環境整備も図ります。

A水辺環境活用区域

 近年、余暇時間の増大や自然とのふれあい志向の高まる中、本町の特徴的な自然資源である水や水辺は、周辺の自然的、社会的、歴史的資源と連携しながら、計画的に整備します。
 海岸地域は、ハワイ、石脇などの海水浴場、東郷湖羽合臨海公園、白砂青松や鳴り砂の現象がみられる海岸など本町の持つ優れた自然環境を活用し、海岸環境の魅力向上に努めます。
 東郷湖岸は、自然環境に配慮した整備を基本として、東郷湖羽合臨海公園等を生かした東郷湖岸の魅力向上に努めます。
 また、環境を保全するため水質汚染の防止と水質の改善を図ります。

B田園環境保全区域

 農用地は、食料の安定供給のための基礎的な土地資源であるとともに、町土保全・環境形成・都市との交流の場などの多面的な機能を有しているため、その機能が発揮できるよう計画的な利用・活用を図ります。
 本町の基幹産業は農業であり、稲作を中心に果樹・園芸農業が展開されています。しかし、少子・高齢化はもとより、農産物輸入の増加や景気の低迷による農産物価格の不安定により、就業者の農業離れがいっそう加速されています。本町では、これらを背景に山間部を中心とする農地の荒廃が進んでおり、集落を基礎とした営農組織の育成や地域の担い手の育成に努める必要があります。
 そのため、農作業の受委託、農地の利用集積を進め、効率的な生産体制の確立と農地の有効利用を図り、集落営農組織や認定農業者等の担い手を中心とした地域農業を推進します。
 また、二十世紀梨、ピオーネ、ほうれん草などの特産品の生産振興を図るため、町民・生産者・関係者との連携による元気な産地づくりを進めます。

C市街地(集落地)区域
 a)住宅地

 高齢化、核家族化や居住ニーズの多様化などの近年の動向から、本町においても多様なライフスタイルに合わせた住宅の供給が必要となってきています。また、密集した住宅地も見られ、環境面や防災面が課題となっています。
 そのため、地域の特性を考慮しながら、地域の均衡ある発展を目指し、快適な居住環境のために必要な用地の確保に努めます。
 住宅地の整備にあたっては、災害防止に努めるとともに、自然環境の保全に配慮しつつ、ゆとりの空間の確保、バリアフリー化、福祉・緊急車両が通行できる道路、公園等の生活利便施設の整備など住みよい環境づくりを図ります。
 また、民間の宅地開発を促し、望ましい居住水準と良好な居住環境が確保された宅地造成が行われるよう指導します。

 b)商業用地

 本町の商業は、零細な小売業が多くを占めています。近年、日常生活圏の拡大、量販店の進出、多様化する消費者ニーズなど商業を取り巻く環境は大きく変化し、本町の商業も影響を受けています。
 商業は、町民への生活必需品の提供という本来の役割のほかに、観光や文化の発信機能も持ち合わせており、他の産業と共にまちの活性化にとって重要な役割を担っています。
 そのため、社会経済の状況を把握し、自然環境等に配慮しながら、それぞれの地域の特性に応じた適正な土地利用を誘導します。

 c)工業用地

 近年の製造業を取り巻く環境は、国際競争の激化やデフレ経済の進行など極めて厳しく、設備投資の抑制や海外進出が進む中で、町内への新たな企業の誘致は難しいのが現状です。しかし、企業の立地は、町民の雇用の促進につながり、人口の増加、町の活性化へとつながっていきます。そのため、社会経済の状況や企業立地の動向等を把握し、自然環境等に配慮しながら、必要な用地の確保を検討します。
 また、工場移転等に伴って生じる工場跡地は、良好な環境の整備等のため、有効利用を促進します。

 d)公共公益用地

 文教施設、公園・緑地、厚生福祉施設や交通施設等の公共公益施設用地は、町民福祉の充実と向上に不可欠なものであり、町民生活や町民の価値観とニーズの多様化に対応しながら、環境の保全に配慮し、必要な用地の確保に努めます。
 小学校の跡地利用は、町民の積極的な参画を図りつつあるべき方向を検討し、跡地の有効活用に努めます。

(3)湯梨浜町の特徴ある地域づくりの方針

@「湯」地域資源が多い東郷湖周辺

 はわい温泉と東郷温泉は全国的にも珍しい湖中温泉で、毎年多くの人々が訪れる本町の代表的な観光資源となっています。また、東郷湖周辺には、中国庭園燕趙園、ゆアシス東郷龍鳳閣、ハワイ夢広場や東郷湖羽合臨海公園など自然、歴史・文化等の多様な地域資源があります。それらと温泉を有機的につなぐことにより、東郷湖周辺が一体となった観光・レクリエーションの充実を図ります。
 また、東郷湖の自然資源を生かすとともに、2つの温泉の連携を図り、魅力ある温泉地づくりに努めます。
 東郷湖ではシジミ・ウナギなどの漁業が行われていますが、近年漁獲量は減少傾向にあります。そのため、自然保護の啓発や環境美化活動などにより、水産資源の生育環境の向上に努めます。

A「梨」果樹園が広がる丘陵地

 本町の基幹産業は農業であり、二十世紀梨をはじめ農作物の生産振興が行われています。二十世紀梨は本町の代表的な特産物であることから、二十世紀梨などを栽培している果樹園は、より一層の生産性向上と新品種の導入などによる高付加価値化を促進するなど、生産力の維持強化を図ります。
 また、果樹園は、田、畑、山林と一体となって緑豊かな景観を生み出していることから、自然と農業などの産業が一体となった魅力ある街並み景観づくりに努めます。

B「浜」日本海に広がる砂浜

 ハワイ海水浴場、石脇海水浴場、グラウンド・ゴルフ場などは、温泉とともに本町の代表的な観光資源となっています。今後、より多くの観光客に来訪してもらうために、海浜レジャーの充実やロケーションを生かした飲食店等の支援に努め、海辺の魅力の向上を図ります。
 また、本町には羽合漁港・泊漁港があり、これらの漁港を中心として漁業が営まれており、漁業との連携による観光地づくりに努めます。

(4)ネットワーク軸の形成方針

@交通ネットワーク

 本町の交通網は、国道9号青谷羽合道路が東西に走り、本町と他市町とを広域的につないでいます。また、国道9号、国道179号、主要地方道倉吉青谷線、主要地方道三朝東郷線、主要地方道倉吉川上青谷線などは、地域間をつなぐ町民の生活に欠かせない路線となっています。
 今後、道路の段階的な整備を図り、本町と他市町との連携を強化するとともに、町民、基本構想来訪者が円滑に利用できるよう地域間の道路整備を推進し、地域の均衡ある発展を目指します。

A水辺のネットワーク

 橋津川、東郷湖、海岸周辺は、県立東郷湖羽合臨海公園に指定されており、温泉、海水浴場、中国庭園燕趙園、橋津藩倉などの本町の特徴的な自然、歴史・文化資源が点在しています。また、東郷川沿いには運動公園や観光農園、東郷ダムなどの施設が整備され、スポーツ・レクリエーションの拠点となっています。そのため、海岸から橋津川、東郷湖、東郷川、東郷ダムまでの周辺一帯を水辺のネットワークと位置づけ、周辺に点在する公園、歴史・文化的資源とを有機的につなぎ、町民、来訪者が共に快適に過ごせる空間づくりに努めます。

土地利用構想図


ライフスタイル(再掲)
生活様式。衣食住などの日常の暮らしから、娯楽、職業、居住地の選択、社会とのかかわり方まで含んだ、広い意味での生き方。
バリアフリー(再掲)
障害のある人やお年寄りの生活や活動に不便な障害を取り除くこと。