第4編 民俗

第5章 民謡

第3節 わらべ唄

 

 

遊ばせ唄

 遊ばせ唄は、もともと子守をしながら幼児に歌って聞かせた唄である。これを覚えた子供たちは、学校の行き帰りなどに歌い合って遊ぶこともあった。

 [ ]内の題名は、便宜上付けたものである。また、☆印を付けた唄は、前掲「郷土童謡」のなかから東郷・松崎地区の特徴的なものを再録したものである。

 

[花折り]

☆(1)わッち子供 花折り行かんか

    花は何花 サクラ花

一枝折れば パッと散る

二枝折れば パッと散る

    三枝の先で 日が暮れて

    西を見ても 宿がない

    東をみても 宿がない

    スズメの宿を 借りよーか

    スズメはチュンチュン やかましい

    カラスの宿を 借りようか

カラスはカーカー やかましい

    トビの宿 借れて

    三日月お月の 船頭が

    一杯飲まされ りゅーごさん

    二杯飲まされ りゅーごさん

    三杯目に 夜が明けた 

    あなたにひと切れ こなたにひと切れ

    嫁の分が 足らいで

    すっぽりかっぽり 泣きやーる

 

☆(2)わっち子供 花折り行かんか

    花は何花 サクラ花

一枝折れば パッと散る

二枝折れば パッと散る

    三枝の先から 日が暮れて

    朝起きて 空見たら

    真っ赤な真っ赤な きーせんが

    ぶくり履いて 杖(つえ)ついて

    黄金(きん)の杯 手にすえて

    一杯飲まされ 上戸さん

    二杯目の 肴(さかな)は

    オグイ(注)三つ タイ三つ

    しょぼしょぼ 川原のアユの寿司(すし)

    手で取って かわいいし

    足で取っても かわいいし

    婆にひと切れ 嫁の分が足らんで

    すっぽりかっぽり 泣きやれ

    泣きやれ はいいんなはれ

    何に乗って いなーかい

    馬に乗って いなーかい

    馬はヒヒン きょーてい

    なら牛に乗って いなーかい

牛はモウモウ きょーてい

なら駕籠(かご)に乗って いなーかい

駕籠はギチギチ きょーてい

なら飴(あめ)三本 買―て

なめなめ いんなはれよー

  (注) ウグイのこと。

 

[お月さん]

   お月さん何ぼ 十三 九つ

   そりゃまんだ 若い

   若はござらぬ いにとうござる

   いにたけりゃー いにゃれ

   銭さんも ひんぜるけ

   氷砂糖買(か)ーて なめなめいにゃれ

   お月さんの尻(しり)に ようない馬が

   竹筒くわえて

   ピンコシャン ピンコシャンはねる

   どうりん坊主の 鐘つき見やれ

   ガモモ ガモモ

 

[正月つぁん] この唄は主に12月に歌うもので、近づく正月への期待が込められている。(1)正月(しょうがつ)つぁんが ごーざった

    どこんとこーまで ごーざった

    ○○(注1)の先まで ごーざった

    けずりばしに ばぼ(注2)さいて

    食い食い ごーざった

 (2)正月つぁんは よいもんだ

    真っ赤なべべ着て じょじょ履いて

    下駄の歯のよな ブリ食って

    雪より白い 飯(まま)食って

    正月つぁんは よいもんだ

   (1)   ○○は各部落の入口や、目標となるものを言った。「先」は「庭」とも歌う。

   (2)  餅(もち)の幼児語。

 

[どんがちゃん](注)

   どんがちゃんに参(まい)て 飴買(あめか)ーて

   箸(はし)に付けて ベーロベロ

   () 引地・九品山のお祭り。

 

[数え唄]

 (1)一月 門には 松が立つ

    二月 ウグイス 鳴いて立つ

    三月三日は ひなが立つ 

    四月八日は 釈迦(しゃか)が立つ

    五月五日は のぼり立つ

    六月 セミが 鳴いて立つ

    七月七夕 ササが立つ

    八月九月は ほこり立つ

    十月 木の葉が 散って立つ

    十一月は 冬が立つ

    十と二月の 大晦日(おーみそか)

    借金取りが 門に立つ

    そこで私の 腹も立つ

 (2)一でイチジク 二でニンジン

    三でサンショ 四でシイタケ

    五でゴンボ 六つムカゴ

    七つナスビ 八つヤマイモ

    九つコーボイモ 十でトーガラシ

 

[三匹ザル]

   向こうの山に

サルが三匹 止まった

左のサルは 物知らず

右のサルも 物知らず

中のサルは 物知って

ナマズ一匹 突き刺いて

地蔵の前に 持っていんで

おじさんに ひと切れ

おばさんに ひと切れ

おまんは どこ行った

油買いに 酢買いに

油屋の隅に 油一升こぼいて

その油どーした

犬がなめちゃった

その犬どがした

僕が殺(ころ)いちゃった