2編 歴史

3章 近世

4節 庶民の生活

5 火事と病気

 

疱瘡

 病気のうち、疱瘡(ほうそう)に関する資料が多少あるので、次に紹介しておく。

 疱瘡は痘瘡(とうそう)又は天然痘とも呼ばれ、極めて強い伝染力をもつ急性伝染病である。普通、高熱で始まり、3日間ぐらいで熱は下がるが、次に顔・体幹、続いて手足などに発疹し(しん)、それが紅斑となり、やがてエンドウ豆大の大きさになり化膿する。順調にいけば2週間ぐらいで回復するが、できた「あばた」は終生消えない。立川昭二は、「疱瘡は、日本人をもっとも長く、かつ深く苦しめてきた疫病である。奈良時代、仏教渡来と相前後して渡来以来、日本列島に風土病のようにまんえんし、大流行を何回か繰り返した。江戸時代になると連年たえず流行するようになり、日本人は上下貴賤あげてこの病苦を体験させられた。ペストやコレラのように瞬時的な大量死という事態は見られなかったが、日本人は疱瘡となかばなれ親しんできたといえる」と述べている(「江戸時代の痘瘡と民衆」『月刊百科』177号所収)。