2編 歴史

3章 近世

3節 和田氏と自分政治

3 松崎町の支配体制

 

町人

 町年寄などを務めて、特に町政に功労があった場合、「直触(じきぶれ)」の待遇を受ける者もあった。「直触」とは、町奉行直轄の町人であり、もろもろの通達は町役人を経由せず、直接町奉行から通知された。名誉の待遇である。土井久兵衛政信、伊藤治兵衛定行、土井長左衛門、野口重兵衛らが直触を仰せ付かった記録がある。

 町役人・直触の者を除いた町人を平(ひら)町人といった。平町人でも、公共の利益に特別に力を尽した者、あるいは多額の献金をした者には、時として扶持米・上下(裃)・帯刀・苗字を賜ることもあった。

 松崎町の住人のうち、奉公人などを除いた町人は、ほとんど屋号を持っていた。町年寄以下組頭に至るまで、役職をつとめた町人はすべて屋号を持つ町人の中から任命されている。屋号は苗字に代わる称号であった。明治3年、平民に苗字を許されてから、屋号は次第にすたれ、現在では商号として使用されるものがわずかに残る程度である。