「山」の下に「川」?
  果たして何と読む?

町立図書館 48─6012
羽合図書室 47-5552
しおさいプラザとまり 34-3226
◆ 主な新着図書 ◆
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 数年前、岡山県鏡野町の「百乢」という地名は何と読むか、という問い合わせが町立図書館に寄せられました。
  「乢」の字は、諸橋轍次著『大漢和辞典』など主要な漢和辞典には載っていません。これは中国で生まれた漢字ではなく、日本人が考え出した「和製漢字」で、別名「国字」と呼ばれるものです。
  町立図書館が所蔵する菅原義三著『国字の字典』(東京堂出版)には、1553字もの国字が収録されていました。それによると、わたしたちになじみ深いものでは裃(かみしも)、俤(おもかげ)、凪(なぎ)、峠(とうげ)、栃(とち)、榊(さかき)、糀(こうじ)、辻(つじ)、杣(そま)、枡(ます)、腺(せん)、鮃(ひらめ)、鰯(いわし)などが国字に該当します。
  冒頭に紹介した「乢」の読みは「たわ」で、こう配の緩やかな峠道のことを言い表すようです。そこで、先の地名「百乢」は「ももだわ」と読みます。同町ではほかにも「蛇ノ目乢(じゃのめだわ)」という地名もありました。
  国字を使った珍しい地名表記が湯梨浜にもありました。別所に「ホキノウエ」、方面に「ホキノシタ」という小字がありますが、このうち別所の「ホキ」には「山」の下に「川」を書く字「」を当てています(明治時代中期の「土地台帳付属地図」による)。これも国字の一つです。方面の場合は、「山川」の2字でホキと読ませています。
  ホキとは、両側から山のがけが迫り、間に川が流れている、そのような地形を指す言葉のようです。山と川を上下に組み合わせた字は、その自然の形状をうまく言い表すために先人が知恵を絞って考え出したのでしょう。
  郷土の地名に詳しい古田恵紹氏によれば、徳島県の有名な大歩危(おぼけ)・小歩危(こぼけ)の「ホケ」もこの「ホキ」が転訛したとのこと(『因伯・人名地名探訪記』)。古田さんは、歩けば危ないからと「歩危」と記したユーモラスな表記法には感心させられる、と記しています。