東郷短歌会

堰堤の目に白く映ゆ 金次第ダム反対の声を沈めて
                      岡本  肇

あたたかな声に包まれこの年を多く笑ひて師走となれり
                      山下 澄子

我を探す母の目と目が相いしとき出征列車は動き出したり
                      恩地  司

永源寺かや葺屋根の見事さに心鎮まる壮大なる伽藍
                      森 しま子

竿さばき技の光りて急流の中過ぐる瞬歓喜湧き上ぐ
                      高塚 和子

土のいろ貰ひし小さき枯蟷螂鎌も遣ひてそぞろ這ひをり
                      佐々木淑人

あやめ句会

みな雨の綺羅をだきとめ冬木の芽        椋 誠一朗

寒月にまよふ心の消え失せし          椋  則子

二度三度負けて本気に歌かるた         中前 惇子

湯豆腐に心解かれてゆく会話          長 たつ子

聞き役となりて看取りの置炬燵         福井美代子

空の色湖の色変へ日脚伸ぶ           立木 弘子

高き香の部屋に広がる野水仙          秋久 千鶴

寒紅を引きて句会に臨みけり          和田田鶴子

百羽なる鴨に委ねて湖平ら           長安 節子

それぞれに庭の景とし雪囲           福井 敏江

真直ぐに回ってをりし兄の独楽         立木 文子

寺苑にも一礼をして梅探る           福羅加代子