東郷短歌会

倒伏の稲は発芽し株ごとに櫓の長けて雨に倦む日々
                        佐々木淑人
起きてこよ眼をあけよ現世に父のこころに心で語る
                        山下 澄子
年金に暮らす小遣い惜しみなく子孫と共の旅に果たしぬ
                        高塚 和子
来世も貴方の妻にしてほしい夢に出で来よ話し合ひたし
                        森田 幸枝
風に伏す稲田抜き出づひこばゑの緑たたきて今日も雨降る
                        岡本  肇
台風に倒れしままのコスモスは腰曲げつつも花咲かせゐる
                       森 しま子
長雨の凶作の田の遠をゆく汽車は黒煙吐くこともなく
                        佐々木啓介

あやめ句会  椋誠一朗 選

草紅葉まっただ中の散歩路           山田 禧恵

撫子のさゆらぐ程の風の道           池田 淑子

村の名は変れど浜の新松子           藤井 千鶴

大佛の胸濡れ光る冬乃雨            浦坂 厚子

肩よせて語るしぐさや秋桜           絹川喜久子

長浜の古き街辻秋田傘             長浜 和栄

村里は眠りに入りて星月夜           吉田 早苗

秋立つ日嬰の這ひ這ひ電話かな         徳田 和子

爽竹桃問はれし家の道しるべ          市木 久江

暮れ六つの余韻に秋の深みけり         岡田 米子

沢庵や庭石だいて桶の中            若本 保徳

菊白し白衣まぶしく戴帽式           杉本 松代

初紅葉旅の夕闇せまりけり           坂田 正剛