十月六日から八日にかけて三重県伊勢市を中心に部落解放研究第三十八回全国集会が開かれました。
 全国から約一万人が参加し、同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に向け課題ごとに報告と熱心な討議が展開されました。

【全体会】
 部落解放同盟三重県連合会の松村智広さんから、三重県における差別事件の現状と課題について報告があり、自分の知らないところでの差別事件の話を聞くと改めて同和問題について正しく理解していくことの大切さを痛感することとなりました。
 特に講演においては、部落解放のためには目の前の結果だけを求めず、長期的に計画的に教育、行政施策を行っていくことを指摘され、条例化することを提案されました。 鳥取県でも、人権侵害救済法の実現に向けて、条例化する動きが活発化しています。            
【分科会】
 以前から関心のあった部落史と解放運動史の分科会に参加しました。
 三重県域の部落史にも地域性があり、その地域で生きてきた人々の意識が読み取れました。
 明治・大正のころの新聞の記事の一部についての記載がありました。
 当時の新聞によれば、初めはコレラの流行、米騒動などの記事が掲載されていましたが、時間が経つにつれて、なんの根拠もないのにその原因が、被差別部落にあるとされるような記事に変えられていきました。その影響力は、テレビ・ラジオなどがある現代に比べ、多大な影響を与えていたと思います。
 自分が当時、その新聞を読んでいたら、新聞の記事を疑うことなくそう思い込んでしまうにちがいありません。
 また、かつて習った江戸時代の身分制度は、士農工商の下にえた、ひにんという制度でした。しかし、いろいろな講演会や、研修会に参加するようになって、自分たちが、習ったころと比べてずいぶん見直されていることを知りました。
 もし、いろいろな話を聞いていなければ、ずっと間違ったことを知らないまま過ごしていたと思います。
 世の中には、まだまだ子どものころに習ったことしか知らない人がたくさんいるのではないでしょうか?
 いろいろな話を聞いて、差別の不合理性や不当性に気づいてほしいと思います。
転換を求められる部落史学習

 今までの部落史研究は、部落解放運動や、同和行政とのかかわりの中で進められてきたのですが、単純に部落差別の成立を「政治起源説」や、「貧困・悲惨」と言う見方などに、大きな修正と見直しが求められています。
 そのことにより、部落史研究の問題意識は、次の二点を解き明かすことにあります。
 一つは、「なぜ、部落が、差別されるようになったのか」、二つ目は、「なぜ、現在も、差別されているのか」というものです。
 この二つの問題を明らかにすることによって、運動においても、行政や、教育の場においても、部落問題解決への展望を見出していくこと…それこそが、部落史研究の課題であったといってもよいでしょう。
(外川正明著「部落史に学ぶ」より引用)