東郷短歌会

台風の迫りし時か湖は白煙立てて波の上行く
                       毛利伊勢子
墜ちし梨集めて穴に葬りたり流せし汗はいづこに埋めむ
                       岡本  肇
退院と云へども不安なしとせず一病かかえ家路の遠し
                       清水 睦子
部屋うちにまぎれ込みたるこおろぎをようやく捕らえ草にもどしぬ
                       前田 光春
十の字に保つつり輪の両腕大注連縄の太きに見えし
                       高塚 和子
秋風に精霊トンボ軽やかに我が世とばかり田の面を飛べり
                      森 しま子
長き夜の吾れの無聊をほぐせとぞ大きく跳ねて竈馬ひげ振る
                       佐々木淑人
あやめ句会  椋誠一朗 選

小鳥来て西の湖畔の声となり          中前 淳子
背伸びして紫苑の花を切りにけり        福井美代子
露草のかぼそき彩にそつと触れ         伊藤 昭子
丁寧に枯葉集めて草木染            福井 敏江
居ながらに客にも見せし鴨の湖         立木 弘子
毒茸に廻りのものの暗く見え          秋久 千鶴
道草の過ぎて出合ひし秋時雨          和田田鶴子
木犀の風にのりつぎ香を散らす         前田 博子
身に叶ふ仕事とひと日栗をむく         清水 睦子
雑魚跳ねてきらめく波紋天高し         福羅加代子
初鴨の安らぐ細江知ってをり          長安 節子
雨の夜は雨を聴きつつ栗を剥く         長 たつ子